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衛星量子暗号通信技術の開発・実証

背景・目的

近年の量子コンピュータ研究の加速化により、実用的な量子コンピュータが実現されることで、現代暗号で守られていたデータが全て解読されてしまう事態が懸念されています。また、従来のスーパーコンピュータの性能も日進月歩で進展している中、今はまだ解読できない暗号化データを一旦保存しておくことにより、将来、高度なコンピュータが実現したときに全データを一気に解読するような攻撃等への懸念も増大しています。その一方で、厳格に秘匿すべき情報ですら通常のインターネットで伝送されているのが現状です。将来にわたり、個人レベル・国家レベルの機密情報を安全・安心にやりとりするためには、いかなるコンピュータ技術によっても解読が不可能な、情報理論的安全性を有する量子暗号通信技術に基づき、広域的な量子鍵配送・量子暗号ネットワークを構築し、極めて堅牢性の高い安全なサイバー空間を実現することが求められています。

これまで、我が国は量子鍵配送・量子暗号通信の基盤となる技術の確立に向けて、100km 圏内を対象とした地上の2地点間の量子鍵配送やトラステッドノード技術の研究開発や衛星通信における量子鍵配送技術の研究開発に取り組んできており、特に、衛星通信における量子暗号技術の研究開発では、今後の衛星コンステレーションの普及等を見据え、衛星に搭載可能な量子鍵配送技術の研究開発を進めており、既に、鍵の生成レートを飛躍的に改善可能な物理レイヤ暗号の実証まで研究開発が進んでいます。一方、地上系の量子鍵配送・量子暗号関連の研究開発としては、ファイバー網における量子暗号通信のさらなる高速化・長距離化に資する4つの技術(量子通信・暗号リンク技術、トラステッドノード技術、量子中継技術、広域ネットワーク構築・運用技術)の研究開発が実施されています。しかしながら、数百 km~数千 km といった大陸間スケールでの量子暗号通信へのニーズが想定される中、海底光ケーブルを経由する量子暗号通信の実現には量子中継技術が必要ですが、その完成には 10 年単位での研究開発期間を要すると考えられます。海外では、中国が衛星を用いて中国オーストリア間での鍵の共有及び暗号化通信に成功するなど、グローバルスケールでの鍵共有技術として、より高性能化した衛星量子暗号通信による長距離化への取組が進んでいるなど国際的な競争も激しくなっています。他方、衛星量子暗号技術の社会実装に向けては課題も残っています。衛星量子鍵配送では、精密な衛星捕捉追尾技術等が必要となること、悪天候時には地上局への鍵配送はできなくなること、さらには、伝搬距離の増加とともに鍵生成速度が急激に低下し、量子鍵配送が困難になること等の課題があり、それを克服する必要があります。

本研究開発においては、将来の事業化におけるユーザビリティの観点からも、少ない衛星基数でも地球規模での情報理論的安全な鍵共有を可能とし、気象条件や運用コスト等による制約を最小限とする効果を狙うため、我が国独自の低軌道衛星と地上局の双方を開発し、情報理論的に安全な暗号通信を実現できる新たな量子鍵配送技術及び物理レイヤ暗号技術の実証を進めることとします。

具体的には、量子鍵配送及び物理レイヤ暗号による鍵共有機能(情報理論的安全性が保証されているものに限定。以下同じ。)を有する低軌道衛星の開発を実施するとともに、暗号通信網の実用性・利便性を向上させるため、衛星地上局間の量子鍵配送において衛星と光通信リンクを形成可能とする地上局も開発します。さらに、地上系量子鍵配送網と統合運用するための衛星系・地上系統合ネットワーク化技術を開発します。


【参考】関連する宇宙基本計画や宇宙技術戦略の抜粋
宇宙基本計画(令和5年6月 13 日 閣議決定)
4. 宇宙政策に関する具体的アプローチ
(2)国土強靱化・地球規模課題への対応とイノベーションの実現に向けた具体的 アプローチ
(a) 次世代通信サービス
【量子暗号通信の早期実現に向けた開発・実証支援】

我が国が強みを持つ衛星量子暗号通信技術の社会実装を早期に実現し、将来市場において我が国の技術的優位性を獲得していくため、距離に依らないグローバル規模での量子暗号網構築のための研究開発を進めるとともに、今後の活用等について安全保障分野も含め検討を進め、宇宙実証の実施など、早期実現に向けた取組を積極的に推進していく。


宇宙技術戦略(令和6年3月 28 日 宇宙政策委員会)
2. 衛星
I. 通信
(2) 環境認識と技術戦略
④ 秘匿性・抗たん性を確保する通信技術
ii. 技術開発の重要性と進め方

前述の低軌道通信衛星コンステレーションや静止通信衛星等と地上間の光通信は、従来の電波通信よりも指向性が高く、特定の狭い範囲にビームを照射するため、外部からの盗聴や傍受が困難なことから秘匿性が高いという特徴も有しており、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が開発を進める光地上局の社会実装も重要である。

また、衛星量子暗号通信技術については、我が国においては 2010 年よりNICT が構築した都市間レベルの実証ネットワークが長期稼働している。こうした技術的強みを活かし、量子暗号装置等の開発を進めるとともに、実運用も含めた宇宙実証を行うことにより、距離によらない堅牢な量子暗号通信網の早期の実現を図っていくことが重要である。

資料

公募要領

提案書様式1-14

提案書様式8 別紙1

提案書様式8 経費内訳(a.総表シート)

提案書様式8 経費内訳(c.補助金(税抜)シート)

※提案書様式8 経費内訳は旧様式で加工されたものでも問題ありませんが、打上げ経費を計上する場合は新様式を使用することを推奨します

※委託契約に関する詳細は「契約・補助関連」ページをご覧ください

募集期間中に、資料の追加および更新がなされる場合がございます。
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公募説明動画

宇宙戦略基金事業 公募説明

宇宙戦略基金事業 公募説明


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提出先

本事業は、府省共通研究開発管理システム「e-Rad」で応募を受け付けます。
詳細はこちらをご確認ください。

採択決定までのスケジュール

  • 公募開始日 2024.07.26
  • 公募締切日 2024.09.12
  • 採択結果