基金概要
宇宙戦略基金設立の目的・概要
人類の活動領域の拡大や宇宙空間からの地球の諸課題の解決が本格的に進展し、経済・社会の変革(スペース・トランスフォメーション)がもたらされつつある。従来の米露欧日に加え、中国、インドをはじめとした各国による国際的な宇宙開発競争が激化している。
こうした中、宇宙関連産業の市場規模も急速に拡大し、各国ともに官主導の宇宙開発から官民連携への宇宙開発へと移行しつつある。我が国としても宇宙開発の中核機関である宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)を結節点とし産学官による宇宙活動を加速することが求められている。
本事業は、「輸送」「衛星等」「探査等」の3つの分野において「市場の拡大」、「社会課題解決」、「フロンティア開拓」の3つの出口に向け、宇宙技術戦略で抽出された技術項目を参照しつつ、技術開発テーマを設定し、スタートアップをはじめとする民間企業や大学等が複数年度(最大10年)にわたって大胆に技術開発に取り組めるよう、宇宙分野の資金配分機関としてJAXAに新たに基金を設置し、支援するものである。
本事業では、我が国の宇宙活動の裾野拡大や産学官によるエコシステム形成を見据え、技術成熟度(TRL)が高く民間企業が主体となる事業実証から、官民が連携して進める技術実証、TRLが低く大学や国立研究開発法人が主体となる革新的技術開発まで幅広く支援対象とするが、こうした取組が散逸的にならないよう、我が国が持つ技術開発リソースを最大限活用しつつ、以下に掲げる目標や方向性に沿った技術開発を推進する。
基本方針において技術開発の方向性やその基本的な実施方法等の事業全体の制度設計を定めるとともに、実施方針において技術開発テーマ毎の目標や内容、具体的な支援方法等を示す。
宇宙戦略基金の基本方針及び実施方針
基本方針及び実施方針
事業全体の制度設計については「基本方針」、各技術開発テーマの目標、内容については「実施方針」においてその具体的事項を示す。
本事業の技術開発テーマの設定にあたっては宇宙技術戦略(「宇宙輸送」「衛星」「宇宙科学・探査」「分野共通技術」)で抽出された技術項目を参照する。
その上で、JAXA主体ではなく、民間企業・大学等が主体となることで、より効果的な技術開発の推進が図られるテーマを、本事業の技術開発テーマとして設定する。
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基本方針
- 目的・概要
- 目標、技術開発の方向性
- 技術開発テーマの設定や目標の考え方
- 技術開発の実施方法(支援対象、対象経費、支援期間、支援の形態、支援の類型、技術開発課題選定の観点、技術開発実施体制、知的財産等の取扱い、政府調達の推進等)
- 技術開発マネジメント(運営体制、ステージゲート評価等、技術開発成果の発信等)
- 経済安全保障上の配慮
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実施方針
- 技術開発テーマ名※以下、技術開発テーマ毎に定める。
- テーマの目標(出口目標、成果目標)
- 技術開発実施内容
- 技術開発実施体制
(対象事業機関に対する要件等) - 支援の方法(支援期間、支援規模、支援件数、自己負担の考え方等)
- 審査・評価の観点
- 技術開発マネジメント (ステージゲート導入の考え方等)
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文部科学省
(宇宙開発利用分野における先端・基盤技術開発等の推進)
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経済産業省
(事業化に向けた研究開発の支援を通じた宇宙関連産業の振興)
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総務省
(宇宙分野における情報通信技術の開発・利用促進)
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内閣府
(事業全体の制度設計、宇宙技術戦略のローリング等)
JAXAの基金運営体制
基本方針/運営体制
JAXAは、外部有識者にて構成される第三者の審査体を設置し、厳正かつ公正な審査、評価を行うとともに、自らの高度かつ専門的な知見及び経験を活かした技術開発マネジメントを実施する。
基金事業全体の進捗や、各技術開発テーマの進捗・達成状況をJAXA内外の知見を活用しつつ、適時・適切に把握し、その状況について宇宙政策委員会等へ報告を行う(年一回程度)。
その上で、JAXA主体ではなく、民間企業・大学等が主体となることで、より効果的な技術開発の推進が図られるテーマを、本事業の技術開発テーマとして設定する。
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PDプログラムディレクター
外部有識者:1名
ステアリングボード(プログラム運営に係る総合調整)
委員:外部有識者により構成
JAXAは、本事業全体の管理を行うステアリングボード(その座長をプログラムディレクター(PD)と呼ぶ)を設置し、政府の基本方針・実施方針を踏まえた基金事業全般の方針、領域横断的な事項などプログラム全体運営に係る総合調整を行う他、各領域の取組状況・課題等を把握し、基金事業全般の目標達成、成果創出に向けた事業運営体制を構築する。
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POプログラムオフィサー
外部有識者:宇宙輸送/衛星/宇宙科学・探査等・複数名
各領域(輸送・衛星・探査等)審査会
委員:外部有識者により構成
各領域(宇宙輸送、衛星、宇宙科学・探査等)の技術開発テーマのプログラムオフィサー(PO)を任命し、POは、各技術開発テーマの採択・ステージゲート評価等を行う他、実施内容の中止・見直し・加速・連携を判断するなどについての最終的な決定を行う。各領域の技術開発課題の審査・評価に際しては、JAXAは、POを長とし外部有識者にて構成される審査会を設置する。
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JAXA
宇宙戦略基金事業を担う部署(ボード事務局運営・総務人事・契約財務・公正推進・事業支援・技術支援など)
JAXAは、各POと連携し、実施機関の技術開発の取組状況を定期的にモニタリングし、目標達成・成果創出に向け、必要な調査分析、技術的助言・支援を行うなど、高度かつ専門的な知見及び経験を活かした技術開発マネジメントを実施する。
※2024年1月、経営企画部内に宇宙戦略基金準備室を設置。24年度早期の公募を目指し、順次、体制を強化していく。
その他のJAXAにおける産業競争力強化に係る取組について
JAXAでは、宇宙戦略基金のほか、従前から新事業促進部等において宇宙産業の競争力強化に取り組んできております。
産業競争力強化に係る取組はこちら。
事業説明会アーカイブ
JAXAと担当府省(内閣府・文部科学省・経済産業省・総務省)による、宇宙戦略基金の事業説明会を開催しました。
制度や事業の概要は、アーカイブ動画をご覧ください。
宇宙戦略基金のシンボルについて
宇宙戦略基金は、「鶴」をシンボルとしています。古来日本で縁起物として親しまれてきた鶴は、冬になると遠く離れた越冬地へ移動します。その際、複数羽で編隊を組んで飛行しますが、それは前の鳥の羽ばたきが生み出す気流に乗ることで、群れとしてより遠くへ飛ぶことができるためと言われています。
一羽よりも、三羽のほうが、遠くへ飛べる。それは、産・学・官の結節点として、"日本の宇宙産業を飛躍させたい"という、宇宙戦略基金の思いと重なります。日本の宇宙産業により遠くまで羽ばたいて欲しい、世界に伍する宇宙関連事業・研究開発成果がここから生まれて欲しいという思いを込めて、鶴をモチーフとしたデザインとしました。