粒子線治療装置を用いた宇宙放射線試験を実現する技術基盤の確立

QST量子医科学研究所(量医研)サイクロトロン施設において、宇宙放射線試験専用コースを整備し、試験効率向上のための大面積照射場と照射試験支援設備の開発を実施する。これにより、3年目に陽子からキセノンにいたる放射線試験の機会を最大192時間増加させるとともに、宇宙放射線試験について実績のある他の照射施設と互換性があり、試験ユーザーの技術情報が確実に保護される照射試験設備を構築する。さらに、陽子線・重粒子線治療装置と宇宙放射線試験はビーム仕様に近いことから、本事業で開発する照射試験支援設備をQST量医研の重粒子線治療施設「量子メス」に展開することで、大気中でのデキャップ無し重イオン照射(ヘリウムからネオン)を実現するとともに、全国の陽子線・重粒子線治療施設と連携した将来の試験機会の増加、治療装置をベースにした宇宙専用施設実現の技術基盤を確立する。





JAEA東海タンデム加速器における放射線試験設備の開発

本課題では、当加速器の既存設備を活用して宇宙用ビームラインを整備し、技術開発を通じて効率的な試験環境を実現し、試験時間不足の解消を図る。具体的には、高性能加速管の導入による安定稼働で年間30日の宇宙用マシンタイムを確保し、イオン源および制御系の改良によって核種・エネルギー切り替え時間を短縮する。さらに、真空仕切り薄膜機構の開発により真空排気待機時間を短縮し、大面積移動型試料台や標準基板の採用により効率的な照射を実現する。また、豊富な加速イオンと精密なエネルギー可変性を活かし、中低エネルギー領域におけるLET×Range条件を網羅した高精度試験を可能とする。加えて、2本のビームラインを整備し需要逼迫への迅速な対応と知財保護を両立し、利用収入により支援研究者および保守整備費を確保して持続的な運用体制を構築する。さらに、照射試験技術の共有・発信を通じて国内の宇宙開発関連人材育成および研究基盤の強化に貢献する。





J-PARCリニアックの陽子ビームを用いた宇宙機放射線試験施設の開発

シングルイベント評価に利用できるプロトンの加速器設備におけるエネルギー範囲の拡大、大面積照射等、効率的・効果的なビーム照射手法及び設備を実現するため、茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCの400 MeV陽子線形加速器(リニアック)を活用して、最高エネルギー400 MeVの陽子ビームを照射可能な宇宙機の試験施設を開発する。既存のリニアックを活用することで、我が国において宇宙機の照射試験向けに高エネルギー陽子を供用している施設のエネルギー上限が200 MeVであったものを、400 MeVまで拡大する。また、J-PARC物質・生命科学実験施設においてすでに実装されている、非線形ビーム光学を用いたビーム平坦化技術を応用し、従来の100×100 mm2程度であった照射野を、面積比25倍となる、500×500 mm2という大面積照射を実現する等、効率的・効果的なビーム照射設備を開発する。





一般民間人の健康・快適宇宙生活を実現する宇宙QOL研究開発拠点(牽引型)

「一般民間人の健康・快適宇宙生活を実現する宇宙QOL研究開発拠点」を構築する。地上とは異なるECLSS(環境制御・生命維持システム)に支えられる環境において、十分な訓練を経ずに滞在する一般民間人に対し、「人がどう感じるのか」の視点から、認知・感覚・生理反応に基づく人間中心アプローチによりQOLを向上させる。スポーツ科学、人間工学・クロスモーダル・アート、健康・医学の各領域において、統合データ解析プラットフォームやデバイス、指標・ガイドラインを統合的に活用し、サービス・システムデザインと宇宙実証を通じて成果を確実な社会実装に結びつける。環境条件に制約されない主観的快適性と健康・快適を維持する技術を統合し、低軌道滞在に新しい宇宙QOL像を提示する。「生理・認知・体験空間の相互作用」を徹底的に探求し、得られた知見を産業クラスター形成へ展開することで、宇宙と地上双方に価値を還元する拠点を実現する。






革新的宇宙ガストロノミー技術開発拠点(STAR-MEALS)(牽引型)

本課題は「革新的宇宙ガストロノミー技術開発拠点(STAR-MEALS)」を構築し、閉鎖系に適した食の循環システムを実現することを目的とする。宇宙飛行士が願った「新鮮な果物を宇宙で食べたい」を実現するため、保存性の高いゲルや粉末素材を活用し、フードプリンターで“未来のフルーツ”を創り出す技術開発を推進する。食感・香り・栄養を自在にデザインし、宇宙での新たな食文化を拓く。拠点は三段階で展開し、①天元台高地ラボでの閉鎖・低酸素・極寒環境を活かした模擬宇宙実験、②日本科学未来館都市ラボでの社会実証、③事業終了後の軌道上実証を見据えたポッド設計・体制形成を行う。基盤技術はCOOLD FOOD、3D/4Dフードプリンティング、デジタルレストランシステムであり、未来フルーツ、アバターシェフ、宇宙ダイニング食ポッドを統合し、人間中心の食文化を宇宙実装へつなげる。本研究は地方と都市を結び、国際展開と標準化を通じ、宇宙のみならず地球においても新産業シーズを創出する。