耐放射線・超低電力CNT マイクロプロセッサの開発

宇宙空間での電子機器に求められる耐放射性、超低消費電力、高性能を同時に実現するカーボンナノチューブ(CNT)マイクロプロセッサの開発を目指す。低欠陥・長尺半導体CNTの分離抽出技術と高密度配向CNT膜の成膜技術の開発に取り組み、移動度と素子電流密度の向上を進め、CNT FETの高性能性と超低消費電力性を実証する。耐放射性については、CNT材料固有の強固な共有結合と微小体積の効果に加え、アレイ状CNT膜による冗長性の付与や、イオン伝導性保護膜によるトラップ電荷遮蔽など、斬新なアイデアにより取り組む。また、放射線の影響をマクロプロセッサのレベルにおいても定量的に評価し、耐放射性の観点からアーキテクチャを新たに開発する。3年間の到達目標として、最先端の国産宇宙用プロセッサと同等の耐放射性と100倍のエネルギー効率をもつ可能性を明らかにすることを目指す。






重力影響を排除した擬知能型熱輸送ネットワークの構築

感温性磁性流体(TSMF)は 100℃以下で磁化が劇的に変化する特性を持ち、永久磁⽯の磁場と排熱を利⽤して駆動する磁気熱輸送デバイス(TSMF-HTD)を構築できる。本研究では、熱を感知して⾃律的に流体が循環する「擬知能型」受動熱輸送ネットワークを開発し、重⼒の影響を排除した新しい熱制御概念を実証する。TSMF-HTD は磁気体積⼒を利⽤するため輸送⽅向が重⼒に依存せず、High-G からμG 環境まで適応可能である。また、複数デバイス間を TSMF-HTD で結合することで、受動的な均熱化と⾃⽴的排熱管理が実現できる。本研究では、遠⼼加速装置(High-G)およびZARM 落下塔実験(μG)を通して重⼒影響がないことを実証し、TRL4〜5 を達成する。これにより、機械ポンプや電⼒を⽤いず、永久磁⽯・磁性流体・排熱のみで構成される軽量・⼩型で運⽤可能な新たな宇宙熱マネジメント技術を創出する。





RTG高効率化のための傾斜機能熱電素子の開発

次世代RTG(放射性同位体熱電発電装置)の熱源として検討されるAm-241は従来のPu-238に比べ発熱量が約5分の1である。このためAm-241がPu-238と同等のエネルギーを得るためには約5倍の熱源量が必要となり、RTGシステムの小型化に向けて熱電効率の向上が大きな課題となっている。この課題を解決するために当社はRTGの高温輻射遮蔽設計と、各温度域で最適な熱電材料を組み合わせた熱電FGMの技術開発を実行する。現在のRTGはシステム内の輻射熱交換による熱損失の対応検討が不十分であるため、当社が保有する熱マネジメントの知見をもとに輻射遮蔽機能を備えた最適な断熱構造の設計を実施し、さらに各温度域でキャリア・フォノン制御により高熱電効率を実現した材料を傾斜機能材料(FGM)として設計・接合することでRTGシステム全体の熱電性能指数(ZT)が2に迫る革新的な熱電素子の開発を目指す。





フレキシブル全固体電池による自在設置型宇宙電源システムの開発

本提案は、先進的な宇宙機用デバイスに共通する「スペース不足」という深刻な課題の解決を目的とする。その技術の核となるのが、「フレキシブル全固体電池(曲がる全固体電池)」である。高イオン伝導性の硫化物固体電解質とフレキシブル性を複合化した高分子材料を最適配置し、柔軟性をもたせることによりスペースの最適化と効率的な筐体廃熱経路を同時に実現する。この独自のアプローチにより未活用空間をエネルギー源へと転換し、ペイロード搭載量の増大や船外活動時間の大幅な延長を実現する。さらに、本開発で確立する基盤技術は、並行開発するペロブスカイト太陽電池にも応用が可能であり、将来的には発電と蓄電機能を兼ね備えた革新的なエネルギーデバイス創出に繋げる。





宇宙環境下の温度差・熱エネルギーを活用した電源回路技術開発

宇宙機に搭載される電子機器・電子デバイスの高度化・多様化に伴い、必要とされる電気エネルギーの需要は今後さらに増大すると予測される。本技術開発課題では、未活用であった宇宙環境下の熱エネルギーを新たな電源として活用することを目的とする。具体的には、熱エネルギーにより生じる温度差から電気エネルギーに変換するパワーマネジメント電源回路の基盤技術を開発する。特に、数10℃の温度差から有効な電力を取得できるパワーマネジメント技術の実現を目指す。また、過酷な宇宙環境において安定に動作することを保証するために、幅広い温度変化や宇宙線に対する動作特性を評価し、宇宙環境および放射線に対して高い耐性を有する電源回路技術・熱電発電デバイス技術の確立を図る。





新規磁性蓄冷材開発による高性能宇宙用冷凍機の実現

本提案では、新しい磁性蓄冷材を開発することで、高感度の電磁波観測に必須の極低温冷凍機の冷凍能力の向上を目指す。これまでの冷却システムは複雑で効率が低いという課題を抱えており、その一因として、要となるスターリング冷凍機に搭載されている蓄冷材の比熱が小さいことが挙げられる。そこで、従来材料よりも比熱の大きな磁性蓄冷材を開発する。まず、蓄冷材用に低温での比熱が大きくなる磁性合金の組成を設計し、この材料を冷凍機に適した熱交換効率の高い形状に加工する。さらに、スターリング冷凍機に搭載し、冷凍能力の向上を実証する。新しい磁性蓄冷材を導入することで、冷凍能力が2倍程度に向上することを見込んでいる。 本研究により、極低温冷凍機の高効率化を図るとともに、システムの簡素化および軽量化を目指す。