ペロブスカイト太陽電池は、製造プロセスが低温であることからフィルム基材上に形成することが可能なため、軽量・フレキシブルな太陽電池を得ることが可能である。また、宇宙放射線(電子線、陽子線)に対する耐久性が高いことがJAXAから報告されており、GaAs系三接合型太陽電池に代わる太陽電池として期待されている。しかしながら、現行のペロブスカイト太陽電池だけでは出力が三接合型に比較して低く、かつ耐熱性の低いものが多い。そこで本提案では、宇宙空間での実使用に向けて、輸送に適した軽量性を有しながら、単位面積当たりの発電量が高いペロブスカイト/ペロブスカイトタンデム型の太陽電池を開発する。更に、このタンデム型太陽電池を月面基地で使用するため、ポール形状での設置施工の実証をまずは地上にて行う。この提案にて獲得した技術を用いて、今後広がりを見せる宇宙ビジネスに対して太陽電池で貢献していく。
QST量子医科学研究所(量医研)サイクロトロン施設において、宇宙放射線試験専用コースを整備し、試験効率向上のための大面積照射場と照射試験支援設備の開発を実施する。これにより、3年目に陽子からキセノンにいたる放射線試験の機会を最大192時間増加させるとともに、宇宙放射線試験について実績のある他の照射施設と互換性があり、試験ユーザーの技術情報が確実に保護される照射試験設備を構築する。さらに、陽子線・重粒子線治療装置と宇宙放射線試験はビーム仕様に近いことから、本事業で開発する照射試験支援設備をQST量医研の重粒子線治療施設「量子メス」に展開することで、大気中でのデキャップ無し重イオン照射(ヘリウムからネオン)を実現するとともに、全国の陽子線・重粒子線治療施設と連携した将来の試験機会の増加、治療装置をベースにした宇宙専用施設実現の技術基盤を確立する。
本課題では、当加速器の既存設備を活用して宇宙用ビームラインを整備し、技術開発を通じて効率的な試験環境を実現し、試験時間不足の解消を図る。具体的には、高性能加速管の導入による安定稼働で年間30日の宇宙用マシンタイムを確保し、イオン源および制御系の改良によって核種・エネルギー切り替え時間を短縮する。さらに、真空仕切り薄膜機構の開発により真空排気待機時間を短縮し、大面積移動型試料台や標準基板の採用により効率的な照射を実現する。また、豊富な加速イオンと精密なエネルギー可変性を活かし、中低エネルギー領域におけるLET×Range条件を網羅した高精度試験を可能とする。加えて、2本のビームラインを整備し需要逼迫への迅速な対応と知財保護を両立し、利用収入により支援研究者および保守整備費を確保して持続的な運用体制を構築する。さらに、照射試験技術の共有・発信を通じて国内の宇宙開発関連人材育成および研究基盤の強化に貢献する。
シングルイベント評価に利用できるプロトンの加速器設備におけるエネルギー範囲の拡大、大面積照射等、効率的・効果的なビーム照射手法及び設備を実現するため、茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCの400 MeV陽子線形加速器(リニアック)を活用して、最高エネルギー400 MeVの陽子ビームを照射可能な宇宙機の試験施設を開発する。既存のリニアックを活用することで、我が国において宇宙機の照射試験向けに高エネルギー陽子を供用している施設のエネルギー上限が200 MeVであったものを、400 MeVまで拡大する。また、J-PARC物質・生命科学実験施設においてすでに実装されている、非線形ビーム光学を用いたビーム平坦化技術を応用し、従来の100×100 mm2程度であった照射野を、面積比25倍となる、500×500 mm2という大面積照射を実現する等、効率的・効果的なビーム照射設備を開発する。
「一般民間人の健康・快適宇宙生活を実現する宇宙QOL研究開発拠点」を構築する。地上とは異なるECLSS(環境制御・生命維持システム)に支えられる環境において、十分な訓練を経ずに滞在する一般民間人に対し、「人がどう感じるのか」の視点から、認知・感覚・生理反応に基づく人間中心アプローチによりQOLを向上させる。スポーツ科学、人間工学・クロスモーダル・アート、健康・医学の各領域において、統合データ解析プラットフォームやデバイス、指標・ガイドラインを統合的に活用し、サービス・システムデザインと宇宙実証を通じて成果を確実な社会実装に結びつける。環境条件に制約されない主観的快適性と健康・快適を維持する技術を統合し、低軌道滞在に新しい宇宙QOL像を提示する。「生理・認知・体験空間の相互作用」を徹底的に探求し、得られた知見を産業クラスター形成へ展開することで、宇宙と地上双方に価値を還元する拠点を実現する。