薄肉高精度大物部品生産拡大へ向けた課題

国内からのロケット打上げの高頻度化に向けては、生産に係るリードタイムの短縮が必要となる。当社はロケット事業者へ部品を供給しているが、特に薄肉高精度大物部品において従来の製造プロセスでは、大型加工機のオペレーションに係る熟練作業者の段取り、加工に伴い排出される大量の切粉の清掃、工程間の品質確認に膨大な工数を要する。基盤技術は確立しているが、現状の打上げ機数へ対応することが限界で、今後の高頻度打上げ需要には対応できないため、リードタイム短縮が急務である。本技術開発では、特に工数を要している薄肉高精度大物部品の製造において、自働化・省人化によるリードタイムの短縮、作業標準化による属人化の解消をテーマに活動する。これにより、代表的な薄肉高精度大物部品の生産能力を約2倍へ拡大するとともに、製造コストを削減し、高頻度打上げ需要に対応可能な安定供給体制を構築する。






大径円筒成形体および大型3次元形状成形体の自動積層技術

高強度軽量化素材である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、ロケット構造用材料としての採用が進んでいる。CFRPは炭素繊維に樹脂が含侵された中間材料(プリプレグ)を積層後、オートクレーブで樹脂を硬化させて成形される。航空機と比べ形状曲率が小さく、複雑な3次元曲面や接合構造をもつ小型ロケット部品の積層は、人手による作業が不可欠となっている。2030年代前半までに国内打上数年間30機という目標に対し、手作業による積層では製造能力に限界があり、量産化に対応可能な自動積層技術を開発・実装する必要がある。
本技術開発では、従来の人手による積層作業をAFP、ATLといった自動積層技術を応用、適用することを目指す。具体的には、ロケット部品の要素モデル・フルモデルでの積層実証を行い、ロケットに適した自動積層の運転条件、形状限界を確認する。また、自動積層によるリードタイム短縮およびコスト低減効果の検証を行い、量産化技術の確立を目指す。






ロボティクス技術を活用した固体燃料モータの製造プロセスの刷新

本技術課題は、スペースワン株式会社が運用する小型ロケット「カイロス」の中核である固体燃料モータの製造プロセスの刷新、及び生産コストの低減を目指す。具体的には、固体燃料モータの単一・直列の生産ラインや、厳格な品質管理といった製造プロセス上の課題を、自動充填・搬送システム、自動非破壊検査システム等のロボティクスに加え、DX等の民生分野の革新的な生産技術を実装した各段の製造設備を導入し、抜本的に解決する。プロセス刷新による同時・大量生産と省人化を実現することで、カイロスロケットの年間生産能力を4倍(年2.5機→年10機)へ拡大し、生産コストを大幅に削減、高頻度打上げを可能とする。この成果は、IHIエアロスペースの固体燃料ロケット「イプシロンS」や防衛ミサイルの生産にも適用可能であり、カイロスだけではなく、固体燃料モータに関する国内サプライチェーンの強靱化、ひいては国際競争力の確立に寄与する。






ロケット用推進剤タンクのシリンダ部品製造プロセス開発

ロケット用推進剤タンクは2000番と呼ばれる高強度AL合金材料を採用しており、この材料は一般産業では多く使用されておらず加工技術を持ったサプライヤは限定されている。その中で推進剤タンクのシリンダ部品は高品質かつ安定的な接合技術が求められると共に、ロケット量産に向けコスト削減及び製造リードタイムの短縮が課題となっている。
そこで、①アイソグリッド構造を持つ高強度材料のロール加工技術開発により安定した工程プロセスを確立し、ロール加工から接合まで一社完結によるリードタイムの短縮を図る。②既存技術であるTIG溶接の制御精度向上による安定化を図ると共に、③新たな接合法であるFSW(摩擦撹拌接合)技術を開発し、より高品質な接合を確立する。FSWは設備・技術面でのハードルが高い一方、安定して高強度で欠陥の少ない高速接合が得られる技術である。これら技術開発により選択的に高品質な接合を低コストかつリードタイムを抑えて提供する。






燃焼器一体設計/製造によるロケットエンジン製造プロセスの革新

ロケット打上げの高頻度化のためには現在律速要因となっているロケットエンジン生産リードタイムの短縮を図ることが必要不可欠である。リードタイムの長期化の要因としては、エンジン製造に多数の部品を溶接,ロウ付け,ボルト締結など多くの組立工程を経ていること,各工程で数多くの検査を実施していることなどが挙げられる。これに対し、金属3D積層技術などの活用により部品を一体化して造形することは課題解決の有力な手段となり得るが,設計や検査手法を含めたプロセス全体を変革しなければ効果は限定的なものにとどまる。
本技術開発は、ロケットエンジンコンポーネントの一体化製造を実現するため,設計および検査も含めたトータルプロセスを最適化することを目標とし,ロケットエンジンの高性能・信頼性を担保しつつ製造リードタイムを飛躍的に短縮し,高頻度打上げに資するものである。






超軽量気蓄器のシステム設計技術の構築および製造プロセスの開発

本技術開発では、国産の低コスト軽量気蓄器システムの開発と技術の標準化を行う。現在、高性能気蓄器は海外品が主流となっている。これらは、高コストかつ長納期という課題がある。その要因は、宇宙機とのIFに専用設計を前提、かつ、削出し部材の溶接による製造方法にある。本技術開発では、宇宙機IFとなるマウント部等を含むシステムを開発対象ととらえ、システム要求を標準化し、これに対する標準設計評価手法を構築する。この手法により新規開発におけるプロセスを短縮する。また、塑性加工の適用により生産性を大幅に改善する。塑性加工は低コスト大量生産が可能だが、軽量化が難しい。本技術開発では、機械加工に匹敵する最高水準の軽量化を塑性加工技術で実現する。以上より、開発および製造のコストおよびリードタイムの大幅な削減を実現し、国内唯一の供給基盤を確立することで、高頻度打上げ時代に対応した宇宙機開発に貢献する。






ロケット間の互換性を有する複数衛星搭載システム”TOHRO”(灯籠)の開発

衛星打上げ需要が増大する昨今の市場において、国内商業衛星の海外打上げ依存からの脱却を実現する、国内ロケット間の互換性を有する複数衛星搭載システム”TOHRO”(灯籠)(以下“TOHRO”)を開発する。これにより「年間30件程度の国内打上げ能力確保」というKPI達成に貢献する。具体的には、(A)搭載衛星数を最大化する「小型衛星搭載アダプタ」、(B)500kg級衛星に対応する「Simple PAF 24M」、(C)1ポートに複数機搭載を可能にする「インターフェースプレート」を開発する。これにより、国内ロケットの低コスト化や搭載性向上に貢献する。そして、国内ロケットによる多様な小型衛星の打上げ機会を提供する。Space BDが持つ市場知見と顧客網と川崎重工の設計・製造技術とを融合させ、開発から社会実装までを迅速に遂行する。






再使用型高性能推進システムに向けた電動弁と予燃焼噴射器の開発

本技術開発では、量産および保証管理対応・軽量・低コストといった要求を満たす、推力10ton以上クラス液化メタン推進系に適用可能な推力調整機構部品(流調弁・主弁・予燃焼噴射器)を開発する。製造管理基盤を整備し、これら要素部品のパッケージ販売・提供・技術供与に備える。これにより、「量産管理性」「再使用性」「低コスト性」の3要素を同時に満たす再使用型高性能推進システム部品技術の実用化と将来の高頻度打上へ貢献する。具体的には、以下を段階的に開発・実行する。

1.流調弁および予燃焼器の物理モデル化・制御開発基盤構築
2.安価な新構造を採用した小型高圧大流量電動弁の設計・開発
3.安価な新構造を採用した予燃焼噴射器の設計・開発
4.燃焼試験による弁類および予燃焼噴射器の推力調整機能のサブシステム実証
5.弁類・予燃焼器・制御アルゴリズムのパッケージ化






機電一体型の小型・低コストTVC機器の開発

JAXA研究開発部門の革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラムの中で、「TVC(Thrust Vector Control)機器の低コスト化に関する研究」を進め、国際的な競争力を持つ、小型軽量で低コストな機電一体型(アクチュエータとコントローラが一体化)の出力数百ワットクラスのTVC機器開発について、技術的な成立性および事業性の目途が得られた。本開発では、製品化に向けた
• 要素開発、試作品の詳細設計、製造、評価
• 量産化技術の確立
• コストモデルの確立を実施する。
なお、本開発における課題を以下に示す。

【課題】
• 産業用部品の信頼性を確保しつつ、低コストで調達可能とする、部品品質保証プログラムの構築(JMR-012 電気・電子・電気機構部品プログラム標準のクラスⅢ部品をクラスⅡ相当の品質保証レベルに低コストでアップグレードする方法の確立)
• 小型軽量で低コストの機電一体型TVC機器を実現するための回路の集積化技術の確立(小型・低コストのインバータ/位置センサ開発)






ロケット及びLEOコンステ衛星搭載ソフトウェア無線機の高機能化

昨今の世界的な宇宙利用の広がりにより、ロケットを高頻度に打ち上げるためのロケットの部品・機器の供給が重要な課題となっています。弊社はこの課題解決のため、ソフトウェア無線機を開発し機器供給のリードタイム短縮と低コスト化を進めてきました。この機器は、ロケット向けとLEOコンステ衛星向け無線機を共通設計にすることで、製造数量を増やし、量産効果を得ることが特徴です。
本技術開発では、このソフトウェア無線機をより多くのロケット・衛星に適用するため、多様な要求に対応できるようハード・ソフトの高機能化を行います。また、月産数十台規模の生産能力の生産スキーム確立に取り組みます。更に、本機器を実際にロケットに搭載し実証することで実績を作り、国内外・官民のロケット、衛星への提案力を強化します。弊社は、本技術開発を通じ、我が国のロケット打ち上げ能力の自律性と国際競争力を強化し、宇宙利用の拡大に貢献します。